Brain Syndrome―脳過活動症候群―

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虹色の調べ

「五十川さんっ!」

力なく倒れこんだ茜に二人は駆け寄った。

「五十川さんっ、大丈夫? 起きてっ!」

千影が体を揺すると茜はゆっくりと目を開ける。

「うるさいわね、大丈夫よ、これくらい。どきなっいっ」

体を起こすため腕を地面につくと、茜は痛みに顔を歪める。

「みせてご覧なさい。……ちょっと、千影様。この腕、折れております……」

雪葉は顔を引きつらせ小さく呟く。

サラの攻撃を受け止めた左腕を見ると赤くはれあがっており、すでに逆の腕よりも見るからに太くなっていた。

「大丈夫よ。いいから私を立たせて」

折れていない方の手を膝に添えながら茜は必死に立ち上がろうとする。

「無茶だよっ! そんな腕でっ!」

「なら、あんたがあいつをつかまえてくれるわけっ?」

「どうしてそんなになってまで……」

「いいからっ、立たせて!」

鋭く睨みつける茜の視線から千影は弱々しく目を逸らすしかなかった。

その様子を見ていた雪葉は腕を掴んで茜を立ち上がらせる。

「あいつの情報をいただけますか?」

その言葉をきき茜は口角をあげる。

「ようやくやる気? まあいいわ。あいつはサラ・ブレイク。私と同じ、前頭葉、運動領野のOBSよ。あいつは腕力の向上が主な脳力、剛腕鬼姫(オールブレイカー)よ。私一人じゃまだ敵わない……」

そう呟くと、茜は悔しそうに顔をしかめる。

「あら、いい心がけですわね。自分の無力さを認めるなんて。」

「仕方ないでしょ。冷静にならないとあいつを捕まえることなんてできない。私が行くからサポートしなさいよ。できる?」

「誰に物をいっているの?」

そう告げると二人は互いに微笑み合う。

サラは遠くで三人を見ながら叫び声をあげていた。

「なにやってるの!? どうせ骨なんかばきばきに折れているんでしょう!?……あぁ、あの感触……何度味わっても気持ちいいわ。もっと味合わせてよ、人が壊れる瞬間をっ!」

サラが高らかに叫ぶ。

「ちっ、この人体破壊快楽者(へんたい)がっ」

茜が苦々しく言い捨てる。

 ゆっくり立ち上がったが左腕に走る痛みは薄れない。

痛みをこらえるように歯を食いしばると意を決したように茜は声を発した。

「いくわよっ」

片腕をだらりとたらしながら、茜は再びサラに向かって走り出した。

(あいつに私の攻撃がきいていないわけじゃないはず。少しずつダメージを蓄積させていけば必ずっ)

打ち身や擦り傷ができていることを考えるとその考えはあながち間違いではない。

しかし、ダメージを蓄積させていくこと事態が今の茜には難しかった。

左腕を骨折した痛みで走るスピードが激減し、ヒット&アウェイを行おうにも先ほどのスピードについてきたサラの前ではまた捕まり攻撃を受けてしまう。

茜の脳裏にもその考えが浮かび、いざ攻撃を仕掛けようにもできないでいた。

サラの周りを飛び回りながら何か手はないかと考える。

(玉砕覚悟か……)

そう茜が思っていた矢先後ろから声が響いた。

「行って。あなたは私に何を頼んだのかしら?」

雪葉の声。

先ほどとは違い、一緒に戦ってくれる人がいるのはなんて心強いんだろう。

茜は否定するだろうが、確かにこのとき茜はそう感じていた。無意識に。

雪葉の言葉を信じ、サラに攻撃を仕掛ける。

鞭のようにしなる足がサラの腹部へ向かう。

(バカがっ。何度も同じ手が通用するって思ってるなんて甘ちゃんだね)

サラの手がさっきと同じように茜の足を掴みにかかる。

その瞬間――

キイィィィィン

「なっ!?」

 頭に突き刺さるような高音域の音が中庭に響くとサラの身体は瞬時に硬直した。

その隙に茜の足はサラに幾度となく突き刺さりその身体は横に飛ぶ。

起こったことが理解できなかった茜は、サラとの距離をとり驚いた表情で雪葉を見つめていた。

すると雪葉は少し自慢げな様子で茜に目配せをしてから千影に向かって振り向いた。

「私の脳力は一つではないんです。超絶歌唱(ビューティフルディーバ)は見世物用。本当の脳力は七色美声(レインボーボイス)超絶歌唱(ビューティフルディーバ)も今見せた高音刺激(ノイズトーン)も七つあるうちの一つでしかないんですの」

そう言うと雪葉はかわいらしく千影に微笑みかけた。

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